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千葉大学 大学院理学研究院/融合理工学府 化学コース
Graduate School of Science, Chiba University

研究概要Research

分析化学は物質を分離・分析するための方法論を探求する学問であり,科学技術の発展を支えると同時に,地球環境や人間生活の保全にも貢献する重要な学問分野です。本研究室では,分離法・分析法に用いられる様々な機能性物質について,基礎と応用の両面から研究を行っています。

ある分子が他の分子やイオンをその大きさ・形・電子配置などによって識別し,選択的に反応する現象のことを分子認識といいます。分子認識は生体内反応において重要な役割を果たしていますが,人工的にも抽出,クロマトグラフィー,化学センサーなどの分離法・分析法の基本原理として利用されています。本研究室では,イオン液体や超分子錯体などの機能性物質についてその溶液内反応(錯形成,イオン対生成,異種溶媒間移行など)における認識能の特性と機構を明らかにするため,種々な測定技術を用いて反応を詳しく解析しています。また,得られた知見に基づいて,これらの反応の高選択化や新しい機能性物質の創製を行い,分離法・分析法へ応用しています。

現在の主な研究テーマ


1.分離媒体としてのイオン液体の特性解明と溶媒抽出法への応用
常温で液体状態の塩であるイオン液体は,安全性・環境調和性に優れているばかりでなく,物質を溶かす能力においても通常の溶媒とは異なる特徴を持っています。当研究室では,種々の有機化合物や金属イオンに対するイオン液体の抽出能力を詳しく解析し,その抽出機構および抽出特性の評価・解明を行っています。また,イオン液体の特性を活かしてレアメタル,ヨウ素,薬毒物を効率よく分離・濃縮するための新しいイオン液体抽出系の開発に取り組んでいます。なお本研究の一部は,千葉県警(科捜研)のM本拓也博士と協力して行っています。

2.特異な分子認識能を有するメタロホストの創製とその認識特性の評価
クラウンエーテルに類似した環状構造を持つ金属錯体は,自己集積反応により容易に合成できることや,従来の大環状有機化合物とは異なる機能を持つことなどから,次世代のホスト分子として注目されています。当研究室ではリチウムイオンやセシウムイオンに対して高い選択性を示す金属錯体型ホスト分子(メタロホスト)を合成し,その認識特性の評価を行っています。また,これを利用した環境水および生体試料中の金属イオンの高感度・高選択的分析法の開発に取り組んでいます。

3.金属酸化物ナノ粒子による金属イオン捕捉挙動の解明
高エネルギー加速器施設では,加速器冷却水中で生成する放射性核種の挙動が,環境への影響および安全上の観点から重要な問題になっています。当研究室では,重要核種である7Beと,冷却水中に存在するコロイド物質(酸化銅等)との相互作用を明らかにするため,非放射性のBe2+を用いて酸化銅ナノ粒子への吸着挙動を調べています。また,様々な金属酸化物ナノ粒子について金属イオン捕捉能や液液界面吸着挙動を調べています。なお本研究は,高エネルギー加速器研究機構の別所光太郎博士らとの共同研究です。